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「本当ですか…?」
疑う気持ちは微塵もないのに、嬉しくて思わずついて出た疑問の言葉。
瀬名は緩んだ頬を両手で押さえる。
「本当だよー。僕、よく水上に余計な事言うなって釘刺されるけど、絶対に嘘は言わないから」
津田の表情は見えなくとも、水上を慮る気持ちに溢れていて、彼の作り話だとは到底思えない。
「実際に評判も良かったんだよね。女性客中心に客層は広がったし、手間とコストをかけてでも、切り替えた意味は大いにあったと思うよ」
フレッシュの多用という行動自体は、世間的にはあまり堂々とできたものじゃないが。
(水上さんが私に、感謝―――?)
トクン、と心地好い心音とともに、温かな気持ちが胸に広がっていく。
あの日から瞼に焼き付いて離れなかった、水上と女性が並んで歩く光景も。
渦巻いていた不安も、全ての負の要素が薄らいで、取り戻される、失いかけた自信。
「確実に北川さんだって証拠がある訳じゃないよ?他にも同じような飲み方してたお客さんはいただろうし。
でも水上があんまり嬉しそうに言うからさぁ、なーんか、ピンときちゃって。本人は隠してるつもりだったかもしれないけどね。
些細な接点を発見して喜ぶ水上見てたら…きっと、北川さんの事が好きなんだろうなって思ったんだよ」
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