伝えたい、真意と真実。【前編】

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靄のかかった彼女の意識に飛び込んできたのは、聞き慣れた携帯のメールの着信音。 「………ん、あ、れ…ケータイどこ…?」 夢から現実へと引き戻されたばかりの瀬名は、 まるで胴体以外を引っ込めた亀の如く、頭から被っていた掛け布団の中から、そろりと腕を伸ばし携帯の在処を探した。 無機質な硬い質感が指に触れ、布団の中へと手繰り寄せる。 二つ折りになっていたそれを暗闇で開き三回程キーを押すと、 『あやのさん』と送信者欄に記された、メール内容がディスプレイに表示された。 『お疲れ様。昨日は大変だったね。 マスターから聞いたよ。 瀬名ちゃんのことだから、落ち込んじゃってないかなーってちょっと心配。 私もしょっちゅう失敗したよ! でも意味のない失敗なんてないからね。 元気出して!また月曜日から頑張ろう~』 届いたメールを読みながら、次第に意識はクリアとなる。 瀬名は携帯を閉じ、胸に抱えるように握り締める。 布団を被ったまま、昨夜の出来事の一つ一つを反芻していた。 顧客からのクレームの原因が、自らの仕事のミスであった事。 再び戻った事務所で修正作業を行った事。 そして―――、 共に作業していた涼から、思いも寄らない告白を受けた事。
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