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「はい、家は割と近いですよ。今日は二、三日分のご飯の材料買いにきて適当に買ってる感じです。
津田さんは…仕事、ですか?」
デニムパンツの上から真っ白なコックコートを羽織る彼の姿は、どこからどう見てもオフの日からは程遠い。
「うん、ランチのオーダーストップ入ったからディナーの仕込みしてたんだけどねー。業者さんの手違いでチーズが不足しちゃってて。配送待ってたら時間無いから、ここに買いに来たとこ」
そう説明した手には、輸入物らしき外国語のパッケージに包まれたチーズが数種類。
津田の店は同じ市内だが、数あるスーパーの中での遭遇に驚くばかりだ。
愛想良く微笑む津田につられて、瀬名も思わず笑顔を浮かべた。
「…そういえばこの間のオムライス、凄く美味しかったです!ごちそうさまでした」
「うん、こちらこそ。また来てねー。平日のランチメニューにはないから、週末か前みたいな休業日になっちゃうけど。
あ、そうだ。もしすぐにでも食べたくなったらさ、水上に作ってもらうといいよ」
「え…?」
思いがけない人物の名が登場したせいで、瀬名の心音が一つ強く打った。
彼女のきょとんとした顔に、津田は気付く素振りもない。
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