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「どうして沙那が怒って、それを星也さんに…」
生じた疑問がそのまま言葉として零れ落ちると、顔をしかめた星也の口から再度溜め息が排出される。
「妹はシスコンで、姉は自覚無しか。やれやれだな」
「……。どういう意味ですか…?」
頬杖の姿勢を崩さぬまま言い捨てた星也に、瀬名は怪訝そうに尋ねた。
「だから、北川に彼氏ができた事が気に入らないんだよ。
大好きなお姉ちゃんに、大嫌いな『男』ができた。
自分が嫌悪する人種から大事な存在をとられて、妹さんは大層ご不満な様子だ」
わざと丁寧な物言いに、彼の怒りを察するのは実に容易い。
(沙那が…不満…)
うろたえる瀬名は、身内の起こしている事実とその要因に自分が絡んでいる事を噛み砕けないでいる。
「顔を合わせる度に追及されたぞ。
お姉ちゃんが最近おかしい、帰りが遅い、何か知らないのってな」
「付き合い始めたのは先週末の事なのに…。沙那はその前から…?」
「先週よりも前からだな。
北川の様子を見てて、今までにない感じるものがあったんだろ。
って何で当人じゃなくて、俺が分析してんだ。
問題解決は姉妹でやってくれ。俺を巻き込むな」
重力に逆らってセットされた、硬質そうな黒髪をかき上げる星也。
苛立つ彼の心情をひしひしと感じて、瀬名は口をつぐみ肩を萎縮させた。
「…すみません、迷惑を掛けてしまって…」
「別に北川に謝ってもらいたい訳じゃない。
これからも八つ当たりされるのは勘弁願いたいから、話し合いなり何なり姉妹でやっておいてもらいたい。それだけだ」
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