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突き放しているようでその実、相手へのさりげない思いやりを含んだ星也の言葉に申し訳ない気持ちが胸中に広がり。
と同時に、星也に言われてようやく事態を把握した己を瀬名は恥じる。
どうして気付けなかったのだろう、と。
一つ屋根の下、姉妹二人きりで衣食住を共にしてもう一年が経過したというのに。
彼女の性格も口癖も信条も、姉として誰よりも知っていたはずなのに。
(最近あんまり沙那と話してなかったなぁ…)
自分の事だけで精一杯で、同居する妹の様子を気に掛ける余裕などまるでなかった。
星也の言う通り、彼氏ができた報告と、星也が告げた内容が事実であるなら話し合いをする機会を持たなくちゃいけない。
(沙那……)
遠く離れた場所で制服に身を包み、昼休憩を過ごしているであろう実の妹に思いを馳せる。
「……あ」
「何だ」
「そういえば思い出しました。
『お姉ちゃんだって恋愛には興味ないよね?』って言われた事があって…それで
私、思わず『うん』って答えちゃったんです。
きっとそれも原因の一つですよね」
いつだったか、随分前に憤慨しながら沙那が発した一言。
同意を求められ、場を鎮める為に思わず頷いてしまったが。
思えば、水上との出逢いは果たしており、恋のスタートは既に切られていたのかもしれない。
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