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三日後となる週明けの火曜、仕事を終えた瀬名はカフェ『ソレイユ』へと足を運んでいた。
すっかり日の沈んだ時間帯、ティータイムを終えた店の出入り口には『CLOSED』の小さなアルミプレートが掲げられている。
店内にはカウンター席に座る瀬名と水上、そして向かい合って厨房側に津田の姿。
瀬名が帰宅を始めてまもなく、水上からソレイユにいると携帯に電話があり、彼女はつい十分程前にここに到着したばかりだった。
「おめでとうー!これは僕からのお祝いのスペシャルパフェだよー」
津田はそう言うと、どんっとカウンターテーブルの音を響かせた。
花びらのように開いた口からすらりと伸びた深底のガラス容器の中には、生クリームを随所に挟みながら抹茶と小豆のムースが交互に重なる。
そして最上部の抹茶アイスに、瀬名の目が一瞬で輝いた。
「わあっ、いいんですか!
凄く美味しそう!」
「どうぞ、召し上がれー」
柄の長いスプーンで、すくい上げた抹茶アイスを口に運ぶ瀬名。
口内に広がる上品な甘さに、満足げに顔を綻ばせた。
「おいしい!はー、幸せすぎます。
…ところで、何のお祝いなんですか?」
「えー、ヤダなぁ、最近のおめでとうと言えば一つしかないのにー」
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