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「瀬名。諸々の事情があってコイツに話したんだ、俺達が付き合ってるって」
脳裏のクエスチョンマークからすぐに解放された瀬名だったが、直後に彼女の頬は赤みを増す。
人前で『瀬名』と呼ばれた事への気恥ずかしさ。
そして、『付き合ってる』という単語の響きに、自分は水上の彼女なのだと再認識させられたからだ。
頭のてっぺんから蒸気を出しそうな程の勢いで、
「そ、その節は大変お世話になりまして…しかもこんなパフェまで…」
津田に何度も頭を下げる瀬名。
「やだなぁ北川さん、水くさいって。
あ、パフェはまだメニューに出してない新作だから、後で感想聞かせてね。
でも何だか二人見てたら、当分いいやって思ってたけど彼女欲しくなってきたよ」
「…いらっしゃらないんですか?」
顔立ちは女性的だが体つきは決して軟弱ではなく、外見からすれば彼女がいてもおかしくなさそうなのに。
瀬名は目を丸くして尋ねた。
「うん、しばらくいないよ。料理人は拘束時間長いから、なかなか出会いがなくてねー。
土日祝休みは絶対に無理、唯一の休みも仕込みで潰れたり。
給料安いし、水上は人使い荒いし、自由のきかない雇われシェフだしね…」
関係のない愚痴を後半に織り混ぜて、水上にジト目の視線を送る津田。
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