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「他には?」
瀬名の鎖骨から少し唇を離して、水上は上目遣いでもう一度問う。
「……っ」
自分が見上げる事はあっても、彼から見上げられるのは初めての経験だ。
ブラウンの髪から覗く、色の篭った視線に胸が疼く。
降参とばかりに力なく首を横に振った。
体だけでなく思考までもがその機能を失っており、彼に対する質問を作り出す余裕など到底無かったからだ。
水上は僅かに体を起こして、瀬名の後頭部に添えていた左腕を引き抜く。
彼女の額にかかった前髪を、長い指に絡め梳き上げた。
ちゅ、と軽く音が立つ。
その正体は額に落とされたキス。
再び水上が覆い被さる形となり、絡み合う二人の視線。
「かわいい」
水上の形の良いリップラインから発せられたたった四文字の言葉は、瀬名の顔を瞬時に熱く、より赤く染め上げた。
「…この間と、同じです…」
「同じ?」
「…今の、おでこにしたのと同じように、この間来た時も…」
ようやく言葉を紡いだ瀬名は、恥じらいを浮かべながら、ぎこちなく額を両手で覆う。
「うん。でも、ここからは同じじゃない」
どういう意味だろうと、瀬名が疑問を抱くも束の間。
尋ねようとした彼女の小さな口が、水上の唇によって塞がれた。
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