君の名は。【前編】

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…そうか、彼は事情を知ってるんだった。 そう思った途端、涼の喉が貼り付いた。 不覚にも涙ぐんでしまったのはアルコールのせいだろうか。 「インターンシップもあるしな」 本意を伏せた星也の付け足しに、涼が静かに頷いた。 彼の優しさが胸に滲みる。 告白をして、断られて、幾日も過ぎて。 平常心とまではいかなくても、自然に近い状態で会話が出来るようになって。 ああ、きっと吹っ切れたんだと、自分自身に刻み植え付けてきたのに。 どうしていとも容易く、ならした地は掘り返されてしまうんだろう―――。 「あっ、涼くんも二次会来る?」 涼の前で保志沢と並んで歩くあやのが、振り向き様に尋ねた。 「…や、えと…」 加わるべきか否か惑う涼。 遠慮がちなその肩を、星也がもう一度添えるように叩く。 「そうですね…」 いずれ、どうせ一人の時間はやってくる。 ならばその訪れを少々遅らせるくらい、罰は当たりやしないだろう。 独りきりで感傷的な気分に苛まれるよりも、一晩賑やかな場に身を置く方が実は性に合ってるかもしれない。 「ちなみに二次は私の家の近くだからね。 さあっ、朝までコースよっ」 夜空を指差した声高らかな宣言。 あやのの隣の保志沢は青ざめ、端麗な容姿に似合わぬ蛙の鳴き声のような悲鳴を上げた。 星也が微かに笑う。 涼の塞がれていた喉はほぐれ、口元からは緩く笑みが零れていた。
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