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…そうか、彼は事情を知ってるんだった。
そう思った途端、涼の喉が貼り付いた。
不覚にも涙ぐんでしまったのはアルコールのせいだろうか。
「インターンシップもあるしな」
本意を伏せた星也の付け足しに、涼が静かに頷いた。
彼の優しさが胸に滲みる。
告白をして、断られて、幾日も過ぎて。
平常心とまではいかなくても、自然に近い状態で会話が出来るようになって。
ああ、きっと吹っ切れたんだと、自分自身に刻み植え付けてきたのに。
どうしていとも容易く、ならした地は掘り返されてしまうんだろう―――。
「あっ、涼くんも二次会来る?」
涼の前で保志沢と並んで歩くあやのが、振り向き様に尋ねた。
「…や、えと…」
加わるべきか否か惑う涼。
遠慮がちなその肩を、星也がもう一度添えるように叩く。
「そうですね…」
いずれ、どうせ一人の時間はやってくる。
ならばその訪れを少々遅らせるくらい、罰は当たりやしないだろう。
独りきりで感傷的な気分に苛まれるよりも、一晩賑やかな場に身を置く方が実は性に合ってるかもしれない。
「ちなみに二次は私の家の近くだからね。
さあっ、朝までコースよっ」
夜空を指差した声高らかな宣言。
あやのの隣の保志沢は青ざめ、端麗な容姿に似合わぬ蛙の鳴き声のような悲鳴を上げた。
星也が微かに笑う。
涼の塞がれていた喉はほぐれ、口元からは緩く笑みが零れていた。
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