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「…津田って、ホントおせっかいだよな」
『それが僕の生きがいだからね、なんて。二人には上手くいってほしいんだよ』
心から、願ってる。
最後に付加した言葉が、静かに水上の耳に響いた。
「津田、お前―――」
言いかけたところで、給湯室の外の通路がガヤガヤと賑わい始める。
数名の男性社員が、勤務開始前のタバコ休憩にやって来たようだ。
「悪い。今度こそ本当に切る。またな」
水上は潔く通話終了ボタンを押し、携帯をジャケットの内ポケットへしまい。
いい案配に冷めてくれた残りのコーヒーを一気に飲み干すと、男性社員グループに会釈し入れ違うように給湯室を後にした。
デスクに戻ると、出勤時にはなかった書類数枚が、目を通せとばかりにキーボードの上に置かれている。
一枚ずつ捲る水上の前に、一人の女性が近付いた。薫だ。
「主任。営業区域のリストですが、前回戴いたものより一名抜けておりますが宜しかったですか」
「ああ、いい。俺が抜いておいたんだ。その家は回らなくていいよ」
一礼して速やかにその場から立ち去る彼女を尻目に、ふいに水上の脳裏を掠めたのは津田の言葉だ。
“よく水上の近くで見掛けるから心配だって”
(瀬名が気にしていた…?)
つまるところ、嫉妬してくれたということか。
確かに付き合い始める以前に、瀬名に薫の存在を問われた事もあったと思い出す。
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