第四話

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包帯を巻きながら、さっきの会話を続けた そうでもしないと、きっと醜い己を見られてしまうから 「変わらなかったとしたら、それはそれや でもな、悔やむかもしれん、悲しいかもしれん でも、それは自分のせいやなんて思わないように、わいやったらするわ。わいはきっと、そんな環境の中やったら臆病やろうし」 「人間は皆、弱いんですよ? 脆いし、逃げたくなってしまう でも、人間は強くもあるんですね」 「・・・・そうやなぁ」 確信を突きたい己と、このまま何も聞きたくない己がいる 天秤にかけられて、ゆらゆらと揺れ動く ハクを見据えれば、色香がわいを惑わす 「・・・ハクのことやろ」 己の甘い脳を制すには、聞くことしかできなかった 見開かれる瞳が肯定を示しているのだとすぐに分かった 「・・・私、好きなんですよ」 どくんと自分の心が暴れ始めるのを感じた これは・・・・・・・ 「皆さんのこと」 そう言って悲しそうに笑う君に、変に脱力するわいがいた やっぱ、そっちだよなぁ 「だから、嫌なんです 皆さんが悲しむのも亡くなってしまうのも」 笑っていて欲しいんです、そう言って瞳を伏せる君に自然と腕がのびた だめだ、と言い聞かせても この腕は止まらんやろ ハクが拒まない限り、この腕は君に触れる ゆっくりと己のほうに引き寄せ、緩く腕に力をこめる ハクは俺に、体重を預けた 胸を撫で下ろしている己に、笑みが漏れた こうして君に触れたのは、気を失ってしまった時以来や 相変わらずに細い線に、心配になってまう ふと、頭に過ぎるのは、家においてきた嫁の顔 でも、それは一瞬のことやった そんな己にも、苦笑いが漏れる ハクから表情が見えてなくてよかった・・・・ どこか、落ち着く君の体温 わいと一緒の薬の匂い 緩む頬を引きしめて、君の名を呼ぶ 「ハク?」 鼓動の早さに気付かれてないことを願い、肩を掴み顔を覗けば ハクは眠りに落ちていた 悲しいんだか嬉しいんだか ゆっくりと布団に寝かせて、離れようとしたけど君の小さな手に捕まった己の布に口角があがる 離すのは可哀想やから、ハクのために そんな言い訳を頭で繰り返して ハクの隣へと横になる ゆっくりと抱きしめて わいは久しぶりの熟睡を堪能した
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