第3話 右手の温かさ

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 いつもと変わらずに出勤すると、受付にやっちゃんの姿はなかった。  警備の部長さんにやっちゃんの休みを伝えられる。  受付に派遣されているのはわたしとやっちゃんだけ。  派遣元からできる限り休まないように言い含められているわたし達は何が何でも根性で休まないから、やっちゃんが休むなんて相当具合が悪いんだろう。  昨夜のうちに高熱が出たからインフルエンザかも、なんて今病院にいるらしいやっちゃんからのメール。  今夜はお見舞いに行ってみようかなぁなんて考える。  とにかく、休まないわたし達。  片方が休んだ時は、朝の業務をなんとかひとりで切り抜け、途中から総務の人が交代で受付に入ってくれる。  大概はわたし達派遣の採用を担当している主任さんが来てくれていた。  てっきり今日も主任さんが来てくれるのかと思っていたら、来たのは派手な服装の女の人だった。  髪は金髪に近い茶色でぐるんぐるんに巻いてある。  目力MAXな盛りまつ毛とつやつやグロスは口の輪郭を大きくはみ出していて、色っぽいっていうよりも取って食われそう。  ネイルも長くて盛り上がっていて「これでキーボードを打てるの?」と驚きを通り越して感心しちゃう。  胸元の大きく開いたワンピースは丈が短くて、たしかにスレンダーな体に似合っていないわけじゃないけれど……。  ここは会社なのにね。
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