第4話 キスの予感

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「ごめんね、深愛、迷惑かけて」 「しょうがないよ、インフルエンザだもん」  次の週になってようやっとやっちゃんが出社した。  結局、兵頭さんが第一営業部の部長に説明してくれたので、お咎めを受けることはなかったけれど、派手女も話題にのぼることはなく、なんだかわたしだけがとばっちりをくった形になった。 「そういえば、営業の水越(みずこし)さんと付き合うことになった」  朝のラッシュが過ぎ去って落ち着いた頃、やっちゃんがこちらを見ずにロビー入口を向いたまま言った。  横顔を見れば、大した話じゃないとでもいうようにお澄まし顔をしている。  でも、その内容にわたしはびっくり。 「え、水越さんって……営業部の?」  水越さんというのは、存在感の薄いごくごく普通の実直な営業マン。  人当りが良くて挨拶を返してくれる人だけれど……。 「やっちゃんと接点なんてあったっけ?」  ふたりが話しているところなんて見たことがなかった。
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