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「ごめんね、深愛、迷惑かけて」
「しょうがないよ、インフルエンザだもん」
次の週になってようやっとやっちゃんが出社した。
結局、兵頭さんが第一営業部の部長に説明してくれたので、お咎めを受けることはなかったけれど、派手女も話題にのぼることはなく、なんだかわたしだけがとばっちりをくった形になった。
「そういえば、営業の水越(みずこし)さんと付き合うことになった」
朝のラッシュが過ぎ去って落ち着いた頃、やっちゃんがこちらを見ずにロビー入口を向いたまま言った。
横顔を見れば、大した話じゃないとでもいうようにお澄まし顔をしている。
でも、その内容にわたしはびっくり。
「え、水越さんって……営業部の?」
水越さんというのは、存在感の薄いごくごく普通の実直な営業マン。
人当りが良くて挨拶を返してくれる人だけれど……。
「やっちゃんと接点なんてあったっけ?」
ふたりが話しているところなんて見たことがなかった。
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