第3話 右手の温かさ

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「いらっしゃいませ」  ゆっくりとお辞儀をして顔を上げると、そのお客様は落ち着きなくイライラしていた。 「第一営業部の部長、呼んでくれる?」  歳は五十歳を過ぎたぐらい。  背が低く、頭も薄くなり始めた、どこにでもいそうなおじさん。 「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 「兵頭(ひょうどう)って言えばわかるから」  うーん、身分もお伺いしたいところなんだけれど、意外とこういう方、多いんだよね。  食い下がったら怒らせてしまいそうなので、とりあえず電話に手を伸ばした。  内線で第一営業部の秘書さんに電話する。  コール音を聞いていた時だ。
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