第3話 右手の温かさ

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「申し訳ございませんが、会社名をおっしゃっていただけますか」  隣に座る派手女(仮名)が話し出した。  受話器を耳にしたまま、唖然として彼女を見つめる。 「はぁ?」  兵頭さんは明らかに不快感を露わにして派手女を見つめた。 「身元不明な方をお通しするわけにはいきません。どうぞ、おっしゃっていただけますか?」 「いきません」じゃなくて、「まいりません」、「おっしゃっていただけますか」じゃなくて「お伺いしてよろしいですか」だってば。どうしてそんなに上から目線で話すのよ~。  冷や汗がダラダラ出てきた。  さすがのことに電話を切って制しようとしたところで、電話が繋がってしまった。
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