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あれは、悪夢と呼ぶに相応しい光景だった。数多の悪夢はあれど、あそこまで凝縮された悪夢はない。
何もない殺風景な場所に私はいた。空は真っ赤に染まり、大地は枯れ、根付く生物など一つもない。荒野とは、こういう場所をいうのかもしれない。
私の周りに人はいた。数百人という軍勢だ。
私達はこれから、戦いに挑まなくてはならない。決して負けることが許されない戦いに。
一陣の風が吹いた。視界を遮っていた砂埃を振り払い、私達の視界を開かせる。数百人によって成り立つ軍勢。それに向かい合うようにしていたのは、十数名の『人』と思われる集団だった。
しかし、私達は知っていた。彼らは人の姿こそしてはいるが、中身は全くの別ものであると。怪物、化け物、悪魔。この際、呼び方など何でもよかった。何故から、彼らはそのような言葉に当てはまるような集団ではないからだ。
それでも、便宜上、彼らの呼び名がないというのは大変不便であり、私達は彼らのことを総称して、こう呼んでいた。
「〈スロク〉・・・」
〈スロク〉とは、彼らの特徴的な入れ墨、装飾から付けられた名。もっとも、彼らは以前から〈スロク〉と名乗っていたようだが。
〈スロク〉が、今回、私達の世界を攻めてきた理由は簡単だった。私達が、ここにいると通行の邪魔になるからというもの。
別に私達は、好きでここにいる訳ではない。名目など、彼らにとっては、どうでもよかった。大事なのは、本来の目的を達成できるかどうかだ。私達が、今回、〈スロク〉の標的に選ばれただけのこと。
正直、私は〈スロク〉を見ているのが辛い。彼らは、数百人という私達の軍勢に比べれば、遙かに劣っているように思えた。だが、彼らからは言葉では語り尽くせぬほどの、強い『負』の力を感じた。一人、一人から滲み出る負の力。見ているだけで、吐き気がしそうだった。
何故、このような集団が存在している。若い子に至っては、年端かのない少女ではないか。
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