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「つーか、お前人に話振っといて勝手に話題変えんなよ」
合間に飲もうとしたビールが、何故か視界から消える。
残像を追いかけたなら「かんぱーい」なんて声と、隣でぐびりと動く喉仏。
あ、あ、あ。
そんなにグイッと行ったら全部無くなっちゃう。
声を掛けようと口を動かしたのも空しく、テーブルに置かれた銀色がカコンと軽快な音を立てる。
「なんだよ」
「それ、最後の一本なんですけど」
「んなら、買いにいけば良いじゃん」
「えー、疲れてるからなあ」
「ほらみろ、お前が疲れた疲れた言うから、俺は少し配慮して……」
またしても深くなるシワに、いい加減不味いなという空気を察知する私。
この人の沸点は見た目ほど低くないけど、突沸の危険ありだ。
だから私は慌てて姿勢を正す。
バスタオル一枚に、マロみたいな眉毛で畏まってもあんまり真面目さは伝わらないかもだけど――――
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