始まり。

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【予知夢】 その声というものは、それは不思議なもので── 今私は、誰かに呼ばれている夢を見ている。 その夢はどこもかしこも真っ白で、私を呼んでいるのだから誰かがいるはずなのに、その姿はどこにも見当たらない。 ただ声だけが、私の耳に届いてくる。 「小春……」 この声は瞬だ。 幼馴染みのきりっとしたよく通る声に、私はいつものように安心感を覚える。 瞬がいればもう大丈夫……。 しかしすぐ、その声がいつもと違うという僅かな違和感を覚える。 本当に瞬なの? そんな少しの違和感が、ついさっきの恐怖を思い起こさせて、とてつもない不安を駆り立てた。 ギラギラと怪しく光る眼。 そして、左脇腹の鈍い痛み。 それはただ一瞬の出来事だったのに、私に計り知れない程の恐怖を植えつけた。 『小春、今迎えに行くよ』 え? 誰? 今まで聴こえていた幼馴染みの声とは全く違う声が、辺りに響く。 初めて聴いたはずなのにどこか覚えがあって、 何故か落ち着く……。 その声を聴いただけで、さっきまでの恐怖が嘘のようにほどけていった。 でも『迎えに行く』って、私を迎えに来るの? 誰が? しかしそんな疑問を考える間もなく、私は夢から醒めた。
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