2709人が本棚に入れています
本棚に追加
【再会】
梅雨が明け、段々と夏の日差しが強まってきた七月初旬。三日前、私は下校途中に通り魔に襲われて病院へ運ばれた。
幸いにも、刺された左脇腹の傷は浅くて重症にならずに済んだ。重症にならなかったのは、幼馴染みがすぐに駆けつけて取り押さえてくれたからだった。
「小春、明日は何を買って来ようか」
「うん……それじゃあ、みたらし団子!」
今日も甲斐甲斐しく見舞いに来てくれた幼馴染みの瞬。そんな瞬とは物心がつく前からの付き合いで、一緒にいると安心出来る存在。
「みたらし団子か。じゃあ、明日はそれを買ってまた来るからな」
「うん。でも、すぐに退院するのに毎日来なくていいんだよ?」
「ああ、そうだな。だが本当のことを言うと、お前が心配なんだ」
さっと表情に陰りが出る。
きっと、私が通り魔に襲われたことによって受けた心の傷を心配しているんだろうな。
「平気だよ、大丈夫」
そう、自分でも不思議なくらいに心が落ち着いている。今まで暴風雨で荒れていた海が、いつの間にか凪いでいるように穏やかだった。
それは多分きっと、夢の中であの声を聴いてから……。
『小春、今迎えに行くよ』
それはとても心地の良い低い声だった。
最初のコメントを投稿しよう!