恋ごころ。〔吉田目線〕

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「はっきり言わせてもらうけど、僕には役立たずの小姓など必要ない。これから小春を連れ戻すという時に足でまといになるだけだよ。だいたい君は少し分をわきまえた方がいいんじゃない? 僕自身が決めたこと? 君のことをどうするのかは君が決めるんじゃない、僕が決めることだ」 ここまで言えば幾ら何でも分かるだろう。頑として言うことを聞かないのなら、敢えてこう言うしか無い。 少し殺気を含ませたのが功を奏したのか、眉尻を下げた佐助の顔は、その気持ちと共に俯いてゆく。それを見てた晋作は面倒臭いとでも言いたげに、そして玄瑞は僕を睨んでいた。 「吉田先生……」 「足でまといは要らない。本気で僕のことを考えているのなら分かるよね? もういいから、君は部屋に戻りなよ」 「……はい」 佐助は静かに立ち上がり深く礼をしてから、緊急の文を持ってきた小姓と共に部屋から出ていった。 「栄太郎、流石に言い過ぎですよ。もっと他に言い方があったのでは?」 「僕は玄瑞みたいに人を持ち上げるのは趣味じゃないからね」 いずれ脱藩することを佐助に伝えなければならないし、それを早く言うに越したことはない。正直一緒に付いて行くと言われた時には面食らったが、単純に有難かった。 多かれ少なかれ佐助には迷惑をかけてしまうが、将来この藩を担っていくかもしれない若い存在を、僕の手で潰すことなど到底出来ない。 だから敢えてああ言うしか─── 「お前がそんなんだから、小春も出て行っちまったのかもな……」 「何? 晋作何か言った?」 「いんや何も!」 念の為一発殴っておく。「痛ぇーな!」とぶつぶつ文句を言っていたがそれ以上は突っかかってこなかった。
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