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だけど、全く可能性が無いとは言い切れない。
玄瑞が僕に何を伝えたかったのかは、恐らくこの事だろう。僕にならこの伝言の深意が分かる筈だと。
「ふん、そういうことか」
「何か分かりましたか?」
「佐助、玄瑞に『助かった』と言伝を頼みたい」
「はい! あの……」
「何?」
「……これで最後になってしまいますが、どうかお気を付けて」
「君もね」
まだ若干息が荒い佐助に労いの意を込めて頭をぽんぽん軽く叩くと、真剣な眼差しをした顔が一瞬驚いた顔になり、その後くしゃっと満面の笑みに変わった。
言葉を多く交わさずとも、伝わるものはある。
「それでは」と笑顔のままの佐助は元の真剣な顔に戻り、踵を返して足早に部屋を去って行った。
「そんで栄太郎どうするよ?」
「輪違屋の主人に協力を求めたい」
「うのどうだ?」
「恐らく大丈夫だと思います。ここの旦那さんは壬生狼に対しては良くない印象を持っているので」
これは賭けだ。これからの行動は皆憶測に過ぎない。
だが、今の状況で賭けてみる価値は大いにある。
この花街に壬生狼が現れ、輪違屋で宴を開くとすれば、些細な小春の情報を聞き出すことが出来るのかもしれない。
「桜といったっけ? 君にも協力してもらうよ」
隅で縮こまっているその人物は、一瞬驚いた素振りをしたが直ぐに頷いて見せた。
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