八月十八日。〔小春目線〕

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*** 夢を見た。 以前見たことのある夢を。 あぁ、またこれかぁ、と思いながらも妙にリアリティのある夢で、すぐに忘れてしまう夢だと思っていたけどとても印象的であった。 辺り一面真っ白で建物も何も無い場所。上がどこで下がどこなのかそれすらもあやふやな空間。そこにぽつんと立たされた私は、少し先に見えた黒い二つの点を見つけて、思う間もなく走っていた。 夢の中なのに、走ると現実みたいに息が上がってゆく。どれぐらい走っただろうか。黒い二つの点は、二人の人だった。 一人は吉田さん。もう一人は一さん。 吉田さんは不機嫌そうに腕を組んでいて、一さんは眉根を寄せて心配そうにこちらを見ている。 そして二人とも何故だか喋らなくて、ただ私をジッと見つめるだけ。全く動かない二人に、私は何か喋って欲しいと思った。目の前にいる二人がもしかして蝋人形なのではないかと不安になったから。 ずっと一人で走ってきてやっと二人に会えたのに、目の前の二人は人形で、また一人ぼっちになるなんて嫌だった。 それでも変わらず二人は微動だにしない。 もう何もかもが嫌になって私はその場にうずくまった。島原でも孤独感が拭えなかったのに、夢の中まで一人ぼっちだなんて……。 すると、うずくまる私の頭の上にふわっと何かが置かれた。それはとても暖かくて大きい手であったことはすぐに分かった。 その手は一さんのもので、私を心配そうにのぞき込むその人は先程の無機質なものではなくていつも見る一さんそのものだった。 「小春大丈夫か?」 「一さん……」 優しく語りかけてくれる。それだけで安堵がこみ上げる。 「ちょっと、小春に触らないでよ」 「あっ! 吉田さん!」 私の頭の上に置かれた一さんの手が、吉田さんによって弾かれた。さっきまで蝋人形みたいだったくせに。 「吉田さんやめてくださいよ!」 「ほら行くよ」 吉田さんのほんのり冷たい手に掴まれて、強引に引っ張られた。
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