八月十八日。〔小春目線〕

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*** 声が聞こえる。誰かと誰かが言い争っている様な声。夢から覚めたんだと気づいた私は片目だけを半分開けたが、そこで言い争っている人達と関わるのがなんだか面倒くさくなりまた目を閉じた。 ここは一体どこだろう……。 ふとそんなことを思ったが、目覚めたばかりの頭に思考が全く追いつかず、ただぼーっと耳に入る夫婦喧嘩のような会話に聞き入っていた。 「蝶ちゃん! さっきな、この子のお腹が!」 「すーちゃんいい加減にしてや! 女子の体をまじまじ眺めるやなんて変態やないの!」 「だってぇ……。本当やもん! 僕見たんやで!」 「気のせ・い・や!」 「あ痛っ!」 あ、今デコピンされた。 バチッと鈍い音がこちらまで聞こえてきた。 それにしてもうるさいなぁ。関西弁で喋る男がとにかくうるさい。私のお腹のことを話しているけど、それがどうかしたのだろうか。 そして女の人の方が心なしか、どこかで聞いたことあるような無いような……。 「小春ちゃんが目覚めたらどうするん? すーちゃんのせいやからな!」 「だってぇ……」 なんだろう。すごく起き辛くなってきた。 私が今起きれば、目が覚めたのが男の人のせいになってしまって、今度はどうなるか分からない。だけどこのまま狸寝入りしてるのも気が引ける。 今起きるべきか、もう一度寝ようか悩んでいたら、不意に私に声がかけられた。 「はぁ……小春ちゃん、起きてもいいわよ」 え? 寝たフリをしていたことがバレたことと、先ほどとは打って変わった優しい声音に心臓がどきりとした。関西弁ではない喋り方。そしてこの話し方はきっと───あの人に違いない。
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