八月十八日。〔小春目線〕

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「何故私がここに居るのか不思議に思うだろうけど、さっきすーちゃんは私の幼馴染と言ったわよね?」 「はい」 「少し前から私は壬生浪士組の密偵として長州を探っていたの。もちろん最初は普通に女中として奉公していたけれど、途中からすーちゃんが壬生浪士組に協力しないかと話を持ち掛けてきて、それを受け入れたの」 「え……」 それは単純に私たちを裏切っていたということになる。あのお千代さんが……。 もしかしてさっきの山崎なんとかさんに脅されて無理矢理協力させられていたのではないかと考えたけれど、幼馴染だとお千代さんの口から出ていたのでそれは無いのだろう。 ただ、さっきの私のお腹のくだりで咄嗟に何かを感じ取ったお千代さんがあの男の人を退出させた辺り、完全に私を裏切っていたわけじゃないようにも見える。 短期間のうちに色々起こりすぎて頭が追いつかない。 刺されたはずなのにお腹の傷は無くなってるし、お千代さんは壬生浪士組の密偵で私たちを騙していたし、今いるここは壬生浪士組だと言うし……。 今私は一体どの言葉を信じて、誰を信用すればいいのか。いや、ここにいる時点で誰も信用してはならない気もする。
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