八月十八日。〔小春目線〕

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と、その時。 何やら部屋の外が少し騒がしくなった。その中には歓声にも似た声が混じっている。 「どうやらお帰りになったようね」 私は一瞬なんのことかと思った。一さんや沖田さん達が屯所に帰ってきたとしても、普通に考えれば帰ってきたくらいでこんな歓声など上がらない。 なんだろう……? 私が不思議に思っていると、それに気付いたのかお千代さんは丁寧に説明してくれる。 「実はね、今朝方、朝廷で政変が起こったのよ」 「え?」 「この政変で長州は京から追い出されるでしょうね……。今帰ってきた彼らは今回の政変で御所の警備をしたそうよ。手柄になって大喜びしてるのよ」 そう言ったお千代さんは少し呆れているようだった。正確に言うと無邪気で単純な男達が嬉しくてはしゃぐ姿を、鬱陶しいとでも言いたげな顔。 しかしそんなことよりも……。 「長州が京から追い出される……」 それを聞いて一番に頭に浮かんだのはやはりあの人の顔だった。 現に吉田さんは辻斬りを起こしていただろうし、その政変で京から追い出されるだけでなく何かしらの制裁が課されるのではないかとそれが心配だった。 このまま吉田さんが京から離れていったとして、この時代の地理に詳しくない私は今すぐ追いかけたとしても無理があるし、それよりも前にここから抜け出せるとは到底思えなかった。 私は今、囮としてここにいる。簡単に言えば人質だ。お千代さんに頼んで抜け出すことも出来るけど、今の状況を考えるとお千代さんが背負うリスクが明らかに増す。 「今はとにかく時が必要ね」 どうやら考えていることは同じのようで、私は大人しくこくりと頷いた。
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