八月十八日。〔小春目線〕

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「突っ立ってねぇで、こっちに座ったらどうだ」 ただひたすら驚く私に、そんなことお構い無しで手招きする鬼の副長土方歳三。言われるがまま、縁側に座る土方さんの隣に正座でちょこんと腰を下ろした。 お酒を飲む姿をぼーっと見つめる。 やっぱりイケメンなんだなぁ。 顔立ちがものすごく整っている。口調は高杉さんに似ているけど、端々に感じられる所作は高杉さんの野蛮さとは違ってどこか品がある。 だけどやっぱり─── 「あ痛い!!」 一瞬何が起こったのか分からなかった。けれど、どうやら私は拳骨で土方さんに頭を殴られたらしい。それも結構な強さで。 「ちょっと何するんですか!!」 特に何かしたわけではないのに殴られるとは、これはあまりにも酷い。拳骨が振り下ろされたところをさすると、ジンジンと痛みが広がる。 「気に食わなかっただけだ。人の顔ジロジロ見やがって」 「ひどいですよ……。初対面の人間にこれはない」 「初対面に思えなかったもんでな」 「なんですかそれ」 「お前斎藤から千歳の話は聞いてないのか?」 「聞いてますけど──」 「俺はそいつとちょっとした因縁があったのさ。そんでお前が千歳に似ていたからついな」 「それって私は何も悪くないですよね……」 「似ているお前が悪い」 「ちょっ」 この人は酔っているからなのか、ただの言いがかりをつけてくるけど、この人と喋っていると何故かどこか懐かしさを感じられてならない、そんな気がした。 まるで幼い頃の朧気な記憶が、大人になって思い出されるかのような錯覚。この感覚は一さんや沖田さんに会った時にも感じていた。 もしかして知らぬ間に会ったことあったかなぁ……。 でも、そんなことはない。やっぱりこの人に会うのは今日が初めてだ。
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