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「何か?」
この人も物珍しさで声をかけてきたんだ、きっと。
ここに来てからというもの、近藤さんをはじめとした色々な人から「瓜二つ」「双子か?」「生き別れの兄弟だったのか?」とか千歳さんに似ているからと色々聞かれて困惑した。
近藤さんに至っては、千歳さんと勘違いして「おかえりぃぃ!!」と半泣きで私に抱きついてきた程だ。そんなことがあれば、事情を知らない隊士達にとっては興味の的にもなるんだろう。
「唐突で申し訳ない。これをある人から預かった」
想像していた態度とは違い、私は少し面食らった。
そう言って差し出されたのは、国語の辞書くらいの大きさで風呂敷に包まれたものだった。
「ある人って誰から?」
「懐中時計の持ち主と言えば分かるだろう、と」
「え? どういうこと?」
「俺も見知らぬ人に頼まれた故に、事情はよく知らぬ。では」
「あ、ちょっと!」
私がなかなか受け取らないでいたので、というより洗濯物を抱えたので受け取れず、押し付けるように私の着物の袖に差し入れてその隊士は行ってしまった。
〝懐中時計の持ち主〟
その人とは一体……。
どこかで聞いたような聞かないような。
「こ、小春さーん!」
「はーい!」
お小夜さんの呼ぶ声がしたので、とりあえずそのことは頭の隅に置いて、井戸端へと向かった。
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