だし巻き玉子事件。

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それからお小夜さんと洗濯物を必死で片して、奴らの褌においては、私がそこら辺で拾った木の棒を使い、タライに浸けておいたその“ブツ”をちょんちょんつついただけで、まともに洗いもせずそのまま干した。もちろん干す時も木の棒! 他人の、それも知らない男の下着なんて誰が洗いたいと思うか。 長州の屋敷にいた時、佐助くんだって自分で洗ってた。その洗う現場を偶然目撃すると、少し照れていたけど、「自分のものは自分で洗いますよ」と言っていたくらいだ。 奴らはガキ以下だ! そんでガキ以下の奴らと同じく吉田さんだって、吉田さんは……、ああ、そっか。 「はぁ……」 「ど、どうかしました?」 「う、ううん! なんでもないの、ありがとう」 洗濯物を干す手を止めて、お小夜さんが心配してくれたけど、なんともないと私は答えた。 なんで今思い出したんだろうか。 かつての日常の中に紛れ込んでいて全然気づかなったこと。 吉田さんはあいつらと同じく褌を私に洗わせていたのに、私は特に気持ち悪いとか嫌だとか全然感じたこと無かった。 やっぱり私は……。 ああ、ダメだ。答えは喉元まで出かかっているのに、それを吐き出す勇気が私にはまだ無い。 島原で、遠目で再会した時には、私を探しに来たんじゃないかと思ったりもしたけど、そんな確証はどこにもなかった。 と、その時。 洗濯物を干し終えて、たすき掛けしていた袖を戻した拍子に何かボスッと体に当たり、袖内に見知らぬ隊士から貰った風呂敷包みを今になって思い出した。 中は気になっていたけど、それは夜寝る前に確認しようと思い、とりあえず自室の机の上に置いてくるとお小夜さんに言ってその場を離れた。
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