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自室に風呂敷包みを置いて、炊事場に向かおうとしてると、何やら騒ぎ声──主に土方さんらしき声が怒鳴っているのが聞こえてきた。
関わりたくないと思いつつも、そこを通らないと炊事場には行けないので、息を潜めながら私は空気なんだと暗示をかけて通り過ぎようとした。
「総司! てめぇ何度言えば分かりやがるんだ!」
「そんなー、土方さん怒らないでくださいよ。眉間のシワ酷いですよ?」
「お前なぁ!!」
うわ、沖田さんが土方さんを絶賛煽り中だ。怒られているにも関わらず、めちゃくちゃニコニコしている。悪い意味で。
「ったく、最近はめっきり無くなっておめぇも改心したのかと思ったが、俺が馬鹿だった……」
「そんなぁ、何言ってるんですか、土方さんもともと馬鹿ですよ?」
「てんめぇ! この! クソガキ!」
うわぁ。なんだろう、私がここに来てから毎日のようにこの光景を見ているけど、日増しに沖田さんの煽りがひどくなっている気がする。煽りキャンペーンでもしてるのかな。
今回はどんなイタズラをしたのかと、近くにいた隊士に尋ねると、土方さんのお気に入りの煙管を隠して代わりにキュウリを置いたんだと。
沖田さん野菜シリーズが好きなのかな。
今まで私が聞いたイタズラはどれも野菜を何かと入れ替えるというものだった。
「あー! 小春さーん! おーい、おーい!」
「げ」
庭先で追いかけ回されていた沖田さんが私に気づいてこっちに来ようとしている。何か嫌な予感を感じた私は、その場を離れようとしたけど、沖田さんの足があまりにも早過ぎて追いつかれてしまった。
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