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「もう小春さん、どこに行くんですか」
「いや、ちょっとね。私、炊事場に行かないと行けないから、」
「おい。おめぇもグルか」
「はぁ!? 何言ってるんですか! そんなわけない!」
「うるせぇ」
「痛い!!」
殴られた。それも拳骨で。そして沖田さんも同じく。
なんで私が殴られなきゃいけないの……。
理不尽過ぎて、殴られた衝撃で出た目尻の涙がよりいっそう出てくる。
「土方さん! 小春は何も関係ないでしょう!」
「あ!? なんだよ斎藤、こいつを庇うのかよ」
「小春は何もしていません! 総司が勝手にやってるだけです!」
「だったらなんで、こいつがこの屯所に来た途端、総司のイタズラがまたぶり返したんだよ! あ!? どう考えてもこいつが絡んでるんだろうが!」
土方さんの『こいつ』の辺りで私は頭を鷲掴みにされて、ぐわんぐわん振り回された。
あ、頭が……。
頭を振り回されてそろそろ気持ち悪くなってきた頃、一さんが私の頭を振り回していたその手を掴んで止めて、引き剥がしてくれた。
「小春が関わっている証拠があるのなら、幾らでも殴ってください。ただ居合わせただけで殴るのなら俺は止めます」
「ちっ……勝手にしやがれ」
土方さんは私への制裁を諦めたようでそのまま去るかと思いきや足を止めて顔だけ振り返り、一さんに一言告げた。
「斎藤、分かっているだろうが、そいつは千歳じゃねぇ赤の他人だ」
「分かっていますよ。そう言う土方さんも、もちろん分かっていますよね?」
「あ……、あぁ、分かってるよ!」
舌打ちと、ぼやきを吐きながら土方さんは今度こそ去っていった。
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