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一さんもその後、沖田さんにひと通り説教して行ってしまった。
それにしても掴まれていた頭が痛い。鈍い痛みが居座っていて一向にいなくならない。私がこめかみ辺りをさすっていると、どういう風の吹き回しなのか沖田さんがしおらしく私に謝ってきた。
「ごめんなさい……、私がこんなことしなければ、小春さんに被害は及ばなかったのに」
「そうですよ!」
沖田さんがこちらに逃げて来なければ私は土方さんに八つ当たりされなくて済んだはずだ。イタズラもほどほどにしてくれと私が頼むと、よりいっそう萎れた花のようになった沖田さん。
「私がイタズラをして小春さんに迷惑がかかるというのなら、もうきっぱりやめます……」
そう言ったけど、聞くのはこれで二度目だ。その言葉をどうか信じたい。
「かくなる上は、土方さんにお詫びの印として何かをしたいのですが何がいいでしょう?」
「うーん……」
また癪に障るようなことをすれば、イタズラではないにしろ、勘違いされるに決まってる。
「沖田さんやっぱり──」
「そうだ! 今晩の土方さんの膳にだけだし巻き玉子を添えましょう!」
「だし巻き玉子……」
そこでピンと閃いた。
お小夜さんに仕返しを考えとくと言った件。
私のだし巻き玉子は壊滅的に不味い。だからそれを使って、夕餉にそれとなく混ぜて、上手くいけばバレずに済むかもしれない!
「小春さん! 今晩の膳にだし巻き玉子を特別に作ってもらえませんか?」
「沖田さんそれはやめておいた方がいいと思う」
「どうしてです?」
「今晩の夕餉には全員の膳にだし巻き玉子入れるから、あまり意味無いかも」
「そうですか」
「もっと他のことでもいいんじゃない? お部屋のお掃除してあげたりとか」
「そうですね! それがいいかもしれない!」
水を得た魚のように沖田さんは目をキラキラさせて、その場を去っていった。
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