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「土方さんが毒を盛られた」
「えっ!? な、なんで!?」
「分からない。とにかくだし巻き玉子を食べた途端、泡を吹いて気絶してしまってな。早く医者に見せないと──」
そう言って足早に行ってしまった。
「どうなってるの……」
みんな訳が分からないといった顔をしている。
そりゃそうだ。私たちのターゲットはあの三人組の隊士たち。なのになんで土方さんが……。
それに、一つ気になることがある。万が一にも私のだし巻き玉子を間違えて食べたとしても、泡を吹くなんてことは今まで一度も無かったはずだ。
でも、もしかしたら私のだし巻き玉子が間違って口に入って……。
色々不安になってきた。これってまさか私が犯人じゃないよね?
みんなで炊事場に引き返し、女中さんたちの間で示し合わせるように、土方さんの膳には何もしていないよね? と確認しあったが、全員何もしていないと言う。
「あ、でも──」と、一人の女中さんが何かを思い出したようでそのことを話し出した。
「副長さん、最近なんだかお腹の調子が悪いからと、ご飯を粥に変えてくれと言われていたのだけど、今日はご飯を出してしまったわ」
他の女中さん達も「確かにそういえば!」と思い出して口を揃えた。でも、それと毒入りだし巻き玉子については何も関係が無いように思える。
じゃあ一体──。
「小春ちゃん」
「お千代さん!」
「一体どうなってるの? 三人の隊士は急にぐったりするし、土方さんは毒を盛られるし。とりあえず、ここにいる全員ここから一歩も出ないで」
「え?」
「ここにいる人達全員に疑いが掛かっているから」
「そんな!」
これは大事になってしまった。
小さな仕返しのつもりが、こんなことになってしまうなんて。お千代さんの話ぶりから、隊士達にはどうやら復讐は成功したみたいだけど、土方さんについては全くどういうことなのか分からない。
「とにかく、何があったか話してくれるわよね? 三人の隊士達の様子は前にも見たことがあるわ。あの時は確か、小春ちゃんのだし巻き玉子を皆が食べてああなったことがあった」
あ……。
お千代さんにはどうやら隠し通せないらしい。
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