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「蝶ちゃん、こいつ怪しいところぎょうさんあるんやで!? 朝方、隊士から何か受け取ってたんや! あれが毒やのうて何や言うねん!」
山崎さん見てたんだ……。
そりゃそうだよ、土方さんには監視をつけると言われていて、その役目はお小夜さんだと思ってたけど、詰めが甘いなってどう考えてもおかしいと思ってた。
やっぱり私が犯人にされちゃうのかなぁ……。
「すーちゃん、それ以上言うんやったら縁切るで」
「なっ!? 蝶ちゃん! それは無いやろ!」
ああどうしよう、私のせいでとうとう二人で喧嘩が始まってしまった。女中さん達はお千代さんに加勢して、山崎さんをしゃもじやお盆でボカスカ叩いている。
そんな中、今まで黙っていた一さんが口を開いた。
「本当にやっていないんだよな?」
「当たり前だよ……。確かに私は人質としてここにいるから、疑われるのは分かるけど、そこまで馬鹿じゃない」
「そうだな、確かにおかしな点は幾つかある」
「うん……。だけど──」
「心配するな、俺はお前を信じるから」
そう言った一さんの大きな手が私の頭を包んだ。
きっと今私は泣きそうな顔をしていると思う。
だって、土方さんは意識を取り戻したから良かったけど、一歩間違えれば死んでいた可能性もあったし、そうなれば人殺しとして疑われることになるはずだった。
そうなれば簡単に未来には帰れない。未来に帰るどころか罪を着せられて命さえも無かったかもしれない。
「生温いで、斎藤助勤」
女中さん達にお盆で叩かれながらこちらを見ていた山崎さんは冷たくそう言った。その声音に心臓がドキリと波打った。
「あんた私情に流されたらあかんよ。こいつは、あくまで人質や。副長が殺されかけとるのに、無実やて? 証拠あらへんやん」
「すーちゃん! 何度言うたら──」
「蝶ちゃんは黙っとき!!」
山崎さんが声を張り上げたので、予想していなかったのかお千代さんはびっくりした様子で尻込みしてしまった。
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