3人が本棚に入れています
本棚に追加
それからだった。この無法者の時代、生き延びる為、男に見えるよう短くしていた髪の毛を伸ばし始めたのは。自分の名前を終わり(エンド)から改め、始まり(スタート)にしたのは。それは、自分を新しく始める為でもあった。
そして、彼女は今に至る。
しかし、それでも説明できないことがある。スタートが今、向かっている場所は本来、彼女が受け持つ管轄ではなかった。特に無法者が多く、賞金稼ぎでも往来することを躊躇うような場所だ。そのような場所に、職務を放棄してまで向かう価値があるとは思えない。
それというのも、事の起こりは数日前に遡ることになる。
----数日前
「死者が蘇って、犯罪を起こしていつですって?」
それは、俄(にわか)には信じられないような情報であった。それも仕方ない。死者というのは、大人しく眠っているものである。それが、蘇り犯罪を起こすなど、非科学的すぎて信じられなかった。
「だg、事実なんだ。これを、見てくれ」
上司から手渡された白黒写真には銀行を襲い、金を強奪する犯罪者の姿が写っていた。
「始めはただの銀行強盗だと思われていたのだが、どうも、どこかで見たことある顔だなと思って、過去の事件の資料を洗い直した。すると、銀行を襲ったのは今から十数年年前に、懸賞金が掛けられた無法者だと分かった。しかし、奴は逮捕され銃殺刑に処された。若い頃の私も、その立会人としてみていた覚えていたんだ」
「それでも、偶然ということはありませんか?他人の空似、十数年も経っているなら似た人間が現れても」
「偶然とも思った。すぐには、信じられないことだからな。だが、これを見てくれ」
上司はスタートに数日間の新聞と彼が自前で作製した犯罪者リストを渡した。
「これは?」
「数週間前、国の犯罪者墓地が墓荒しにあった事件の記事だ。趣味の悪い、無法者コレクターの仕業かと思われたが、ここ数日の事件、目撃者からの情報などを照らし合わせていくと、どれも墓荒しにあった無法者と同じだった。そのリストは目撃された死亡している無法者のリストだ」
「こんなにいるのですか?」
「そうだ。その規模は、すでに、一個師団にも匹敵する数だ。しかも、連中はかつて、名を上げた無法者の死者ばかり。さすがに、偶然の一致で片付ける訳にはいかないだろう」
最初のコメントを投稿しよう!