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「あれ?」
数十名の無法者リストに目を通していたスタートの手が止まる。大勢の無法者の中で、その名前を見つけてしまったから。スタートは、まさかと思った。だが、リストには間違いなく名前と似顔絵が書かれていた。
「それで、この蘇ったと思われる死者は、どこを根城に活動をしているのですか?」
逸る気持ちを抑えつつスタートは上司に聞いた。上司は思わしく顔をして、
「死者が蘇るなど、ありえないことだからな。情報が錯綜しているんだ。真偽は不明だが、事件発生の場所と目撃者の証言を照らし合わせた結果、確立として高い場所は、死者の谷だ。あそこなら、軍隊でも易々と近付ける場所ではないからな」
この情報が正しいかどうか。誰にも判断できなかった。そもそも、本当に死んだ無法者なのか。その時点で意見が分かれていた。
スタートは話を聞いた直後、警察署を飛び出すと愛馬に跨り走らせた。彼女は衝動に駆られていた。今すぐにでも、確かめないといけないことがあった。
(どうして?どうして!リストに彼の名前が・・・!)
愛馬の手綱を握り、警察署から数十キロ離れた場所まで走らせた。自分にとって始まりの場所となったところに。
そこは、命を落としたティックを埋葬する為にスタートが自ら掘った墓であった。墓石などなく、代わりに、彼が愛用していたガトリングガンを墓標代わりに立てておいた。知らない人から見れば、誰の墓だか分からない名も無き墓地。
愛馬を走らせ、ティックの墓まで来たスタートは言葉を失う。
「どうして・・・」
そこには、墓があったはずだった。しかし、そこは何者かによって掘り返されていた。
そして、そこにあるはずのティック愛用のガトリングガンまでもが、無くなっていた。
スタートは確信した。あのあまりにも馬鹿げた死者による犯罪の横行。あれは、本物だと。何故なら、あのリストにはティックの名前が載っていたのだから。
ティックの永眠は何者かによって妨げられたのだ。
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