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酒場から遅れて一人、男がふらつきながら出てきた。
「あ、あいつは・・・化け物だ」
そう呟くと、男はその場に倒れた。
「誰が、化け物だって?」
スタートは素早く拳銃を抜くと構えた。
「お前達は、誰に喧嘩を売ったか分かっているのか?」
煙りの中、彼は姿を現した。
彼は、金髪で独特の刺繍が施された鉢巻きを巻いていた。年代物のジャケットを羽織る彼は呆れた様子で、表まで飛ばした連中を見て言った。
「オレ様に勝てると思っているのか?このトコリコに!」
男はトコリコと名乗り、右手の親指を自分に向けて笑みを浮かべていた。
「待ちなさい!」
スタートは颯爽とトコリコの前に割って入り込むと拳銃を向けたまま言った。
「暴行の現行犯で、あなたを逮捕します」
「逮捕?逮捕するなら、そいつらにしておけ。オレ様から金を毟りとろうとしやがったから」
「だとしても、私は保安官です。彼らも捕まえますし、あなたも逮捕します。両手を上に上げて、頭の後ろで・・・」
拳銃をトコリコに突きつけていたスタートは硬直した。煙りが風で吹き飛ばされ晴れていく中、スタートはトコリコの全体像を見てしまった。左腕が煙りに紛れ良く見えていなかったが、煙りが晴れ始めて、その姿を見た。そして、驚きに身体が硬直した。
そもそも、大の男達を吹き飛ばした爆発は何によってもたらされたものだったのか。スタートはその理由を知ることになる。
「拳銃一丁で、オレ様を逮捕する、つもりか?面白いじゃないか」
トコリコは拳銃を向けられているのにも関わらず笑っていた。笑いながら、自分の左腕をスタートに見せつけた。
「う、腕が・・・」
「珍しいか?それはそうだろうな。これは、オレ様の自慢のコレクションの一つだからな。それに、この世界には存在しないモノだ」
トコリコの左腕は肘から先が銃器になっていた。いや、厳密には近未来的な銃器になっていた。それは、弾丸を発射するような拳銃とは違い。エネルギーを充填して撃つレーザー砲に似ていた。
それは、トコリコがいうように、この世界には存在しない銃器であり、スタートも初めてみた。
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