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それは止められた。
「ちょ、ちょっと!」
トコリコの足にしがみつき動きを止めていた男は慌てていた。普通、足を掴まれては動くことなど、ままならないはず。なのに、トコリコは始めから足に捕まった男のことなど無視して、スタートの衣類を剥ぎ取ろうとしていた男を右手で殴り飛ばした。
一回の跳躍で十数メートルはあった間合いを一気に詰めたトコリコは足にしがみついていた男を奴らに投げつけた。投げられた男といえば、移動、瞬間に気絶していたらしく白目を剥いていた。ある意味、一番、最初に気絶しておいて正解だったかもしれない。気絶していなければ、もっと酷い目に合わされていたかもしれないから。
僅か数秒でトコリコは男達を撃沈させた。
色々な意味で危ないところをトコリコに助けられたスタートは彼を見た。
「私を助けてくれ・・・」
「誰がオッサンだ!オレ様は、これでも、まだ二十代後半だ!」
トコリコの眼中には初めからスタートの姿はなかったようだ。トコリコはスタートとの決闘よりも、オッサン呼ばわりした連中に対する怒りで燃えていた。燃えすぎて、トドメと言わんばかりに左腕の銃器を地面に向けると、もう一度だけ撃った。
チンピラのような連中がいなくなり、一応の平和が戻った。酒場の店内はトコリコが暴れたのが原因で一部が黒こげの状態であったが、当事者であるトコリコは特に気にも止める様子もなく、テーブルに残っていた食事を食べていた。そして、向かい合うようにして、何故かスタートも座っていた。
正直、どのようにして報告書を書けばいいのか悩んでいた。死者の話だけでも非現実的なのに、目の前のトコリコが所持している銃器は明かに未来の武器であった。そんなこと、報告書に書いて出せるはずがなかった。
「今回の件は向こうに非があったとして、あなたに関しては目を瞑ることにするわ」
「それは、どうも」
「・・・ところで、さっき、左腕にしていた銃器は?」
気が付くとトコリコは普通に食事をしていた。左腕が丸ごと銃器だったはずなのに、今は普通の腕であった。よくみれば、トコリコの両腕、両足、足にはそれぞれ輪っかが填められていた。腕は腕輪と分かるが、足は足枷のように見えたし、首は首輪のようだ。
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