クリスマスの贈り物

10年目

期待していなかったとはいえ、10年の片思いの結末に鼻の奥がツンととする。

サンタのコスチュームの下に隠れているリストバンドをそっと撫でた。

仕事を終えたのは、それから約1時間後、

「お疲れさまでした」

空からは、雪が降りだし、一段と冷え込み始めた頃だった。

クリスマスイブでも共に過ごすパートナーがいない私は、足早に人込みを抜けて、コンビニに立ち寄った。

今日は、チキンを買おう。それから、椎名さんに会えたからシャンパンでも飲もう。そのためのおつまみも買って帰ろう。

冷え込みが増すのに、失恋したというのに、心はポカポカ温かい。

優しい笑顔が見れたからかも……。

立ちっぱなしで疲れた足だが、椎名さんの笑顔を思い出すと不思議と軽快に動く。

このスクランブル交差点を渡れば、もう家まであと少し。

交差点を渡りきった先にある普段は気にならない公園も、積もり始めた雪で白くなっていて幻想的だった。