クリスマスの贈り物

10年目

「は……い、」

男性と視線が交わった時、トクンと胸の鼓動が大きくなる。

「予約してないと買えませんか？」

「あッ、いえ。た、ただ今！3500円になります」

この顔は、もしかして―――。

この声は、あのリストバンドの人？

10年という時間（とき）は、私の記憶を曖昧にする。

当時PCで調べたユースの椎名秀翔さんの顔は、何度も見ていたが今の顔はわからないのだ。

震える声や手は、寒さなのか緊張からなのか……。

会計時に目の前の男性の指先が掌に触れたが、あの日のように温かくはなくて、余計に不安と緊張がのしかかった。

ありがとうございましたと、声にすら出来ない私を男性は気にもせずにニコッと笑い、

「ありがとう」

逆にお礼を言い、背を向けて去って行く。

―――無意識だった。

数歩歩いた男性を、

「あッ、あのッ！……すいません！」

呼び止めていた。