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だから、余計に目立ったんだ。
公園のベンチに降る雪も気にせずに、俯く黒いコートを着た男性の姿が――…。
クリスマスイブの寒空の中、こんな人気のない場所に座り込んだ男性が……。
公園の横の歩道を一歩、また一歩と近づくにつれてあらわになっていく男性の姿。
その男性の横に、置かれたうちのお店『CIAO』のケーキ箱を見た時、見過ごせなかった。
『皆が幸せな気持ちになってくれるように』
パティシエである店長の願いが込められたケーキが寂しそうにしているのは、胸が締め付けられる。
来た道を少しだけ引き返し、公園の中に入っていく。
足音に気づいた男性が不意に顔をあげた。
「「あッ!」」
こぼれた声は、同時に寒空へと消えていく。
「ごめんね。せっかくのケーキが無駄になったんだ」
先に口を開いたのは、彼だった。
「……椎名さん」
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