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しかし、いくら堂々と歩いているからと言っても、こんなに弱そうな坊ちゃんが裏路地を通っていれば嫌でも目に付く。実際、途中で強面の男と何人かすれ違ったが、皆が皆、優しく肩をぶつけてきてくれた。
──……何とか事無きを得たけどな。しっかし、何なんだ?
ガルは小さく溜息を吐き、現状を静かに嘆く。何故、自分の後ろに十何人もの男が付いてくるのかと。
「…………なぁ? 一体全体、お前等はどーいう訳で俺にストーカーしてんの?」
ガルは、人が二人通れるか通れないかという狭い路地に着いてから、くるりと後ろへと振り向いた。視界に広がるのは、どう見ても不良、チンピラといった類の人種達。およそ、十五人。
大人数と戦う時には、狭い路地で一対一に持ち込むというのが定石ではある。しかし、この人数差ではその定説も当てはまらないだろう。
身包みを剥がされて、路地裏に捨てられるのがオチ。いや、運が悪ければガルという少年の命が費える可能性もある。
だが──顔を真っ青にさせて、唇をわなわなと震わせているのはチンピラ達の方だった。誰の瞳にも殺意は籠もっておらず、怯えだけが身体を支配していた。
「あ、あ、あんた……!! 一体、何なんだよ!!」
スキンヘッドにサングラスといった威圧感のある風貌の男が叫ぶ。顔からは想像できないような弱々しい声音だった。
血染めのナイフを弄り。瞳に陰鬱な光を宿し。この世の全ての悪意を凝縮させたような少年を見つめ──男は叫んだ。
「あぁ。もしかして、さっきの奴らのお仲間さんだった感じ? ご愁傷様。でもさ、肩折れたとか言ってたから直接確認しただけだぜ。で、見てみたら折れて無いじゃん?」
そんな思いを軽く払うかの如く、ガルは静かに笑った。酷薄な笑みを浮かべ、続けて一言。
「だからころした」
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