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二時間半後── "血染めになった"衣服を脱ぎ捨て、ガルが適当に綺麗な服を選別し着込んだ後に足を向けたのは、もちろん自宅。考えてみれば、休みだというのに朝が早すぎた。 ──ったく、養成所も『仕事』も休みだってのに……。それもこれも全部アイツのせいだ……!! 不機嫌さを身体全体で表し、ギロリと自分の家に視線を突き刺すガル。奥歯がギリギリと擦れ、今にも数人殺してしまいそうな雰囲気を醸し出す。 だが、今の時刻は八時半。身体の汚れを近場の湖で落としたり、戦利品の財布から奪った金で朝食を食った今、殺意を向けるべき相手はいないだろう。 何しろ、叩き起こされてから二時間は経っているのだ。居るわけがない。少なくとも、少年はそう考えていた。 ──…………んぁ? しかし、彼の見えすぎる瞳が、二百メートルは離れた小高い家の玄関で蠢く何かを捉える。映るのは、不可解過ぎる景色。 どうして藍色なんていう自分の家の玄関にない色が、鉄製の扉の前で鎮座しているのか? と。 そして、ガルの疑問が解決する前に、疑問は自ら身を乗り出してこちらに手を振ってくる。二百メートルは離れているというのに、腹立たしいが、にこやかな笑顔を浮かべていると理解できた。 「待ってたよーッッ!! さ、デートの時間だよぉ!! 私、お腹ペコペコだよー!! ガルのご飯が食べたいなー……って、何で、ちょっ、オーイ!!」 あまりの残念さに、殺意も消し飛んだ。迷惑女の言葉も聞く必要はない。財布には倹約すれば三日は生活できる金額が入ってる為、少年は家からフイッと家から背を向けて歩き出していく。 ──……面倒すぎる。取り敢えず、今日は家に帰る事は出来そうもないな。 「待ってよぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!」 「な、何?」
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