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ドラ 中央娯楽街 魔人が人口の十割を占める国──ドラ。 周囲の国から貿易は遮断され、国交がほとんどない国。それも自分からという訳でなく、強制的にそうさせられたと言った方が正しい。 要は、世界中から浮いている国だ。だが、過去に信じられないような大事件を起こしたわけでも、戦争を起こしたわけでもない。 ならば、何故。そんな疑問は簡単だ。魔人という種族は、人間と比較して強すぎたのだ。 例えば、魔力と呼ばれる力がある。普通の人間の平均値を一とすると、普通の魔人の平均値は軽く二十を超える程。 もっと分かりやすく言うなら、常人が爪楊枝一本で戦うとすれば、魔人は扱いやすい短剣を持って戦う。人間と魔人の差はこれだけ広いのだ。 そんな強大な力を利用するか、排除するか。人間側の選択肢は、極端に分ければこの二つだった。 だが、魔人は魔人故に、人間を見下す傾向を持つ。そんなものを利用できる訳がない。下手をすれば、戦争を仕掛けられる可能性すらあるのだ。 だからこそ、人間は魔人を隔離し、魔人は人間を見下して今日も生きている。それが今の魔人と人間の関係。 肌の色や髪の色では、人種が計れないほどに多種多様化した世の中だが、それでも両種族は互いを選別出来た。そのせいか、スパイなど互いに送る事もなかったのは、幸いなのか。 それは未だに分からない。いや、今のドラは国外に気を向けている場合ではなかった。 一昔前は栄華を誇っていた娯楽街が、今は人の気配が少ない寂しい世界へと変貌しているのが物語っている。それでも、そんな寂しい世界に少女の明るい声が響いた。 「久し振りだねーっ!! ガルとここに来たのは……一年前? 閉まっちゃったお店は沢山あるけど、今日は楽しもう?」 「……こ、ろす。絶対、殺す。お前を、殺す!!」 「おぶられながら言っても説得力ないよー?」
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