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藍色の髪を敷いて長身の美少女におぶられるガル。歩みを進める度に、ふわりと果実の匂いが少年の鼻孔をくすぐるが、それを気にしている場合ではない。
むしろ、彼の瞳は激痛と憎悪に染まっていた。無論、理由など語るまでもないが、敢えて言うならば腰が立たない状態だ。
そんな情けない少年をおぶるのは、藍色の艶やかな長髪を持つ美少女──ラルロス。身長はガルよりも僅かに高く、長い手足が彫刻のように美しい。
彫刻のように均整がとれているのは、何も手足だけでない。大きいながらも形が美しい胸、引き締まった腰。
だと言うのに、顔は年相応の幼さを残している所が、不思議な可憐さを醸していた。二重瞼の瞳や、少し小ぶりな鼻が愛嬌を振りまく。
「あー、そういえば、私のお腹減ったよ? 減っちっちっちっちっち」
「知るか。死ね」
「ちっちっちっちっちっちっちっちっちっ」
「ぐあっ、揺らすな!! 落ち、落ちる!!」
快活な笑顔でこれから先のデートプランを提案するラルロスに、ガルは不機嫌そうに吐き捨てた。刹那、彼女がぐわんぐわんと上半身を八の字に回転させた為、背中から悲鳴があがる。
「わか、分かったから、どこでも行くからその動きを止めろ!! オィ!! 楽しくなってんじゃねぇよ!!」
「だってー、必死にガルが掴まるもんだからぁ、私も気持ちよくー……ぁふぇ」
「しね、死ね!! 殺すまでもない、死ねぇぇぇ…………き、気持ちわる……」
寂れた娯楽街に木霊する二人の声は、ラルロスが色んな意味で疲労しきるまで続く。そして、少女が顔を真っ青にしたガルを優しく介抱したのは、また別の話。
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「……で、あんなに早い時間に何しに来たんだ?」
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