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グラバラス とある暗闇 「そうさね……全部計画通りに進んでいるよ」 月明かりすら及ばない闇の中――一人の女が静かに言葉を紡ぐ。 上位Sランカー『征服魔女』。緑髪を風に靡かせ、鋭い犬歯を覗かせる彼女の表情は深く険しい。 耳に添う深紅から放たれる声音は、彼女の苦しみを察しているのかいないのか――刃物のように冷たく鋭かった。 「分かってるよ、大丈夫……これがグラバラスの繁栄に繋がるんだろう? 分かってる……分かってるよ」 例えば、そう。 キゼロが襲った貴族――彼等は、孤児院を経営する傍ら、非道な人体実験と強化魔術を成していた。 誰を。どうやって。 そんなものは、語るに及ばない。だが、間違いないのない事はただ一つ。 その対象とされてきた者達は、もう人間としての思考と生き方を取り戻せなくなってしまっていたという事だ。故に、『征服魔女』は、最期は安らかに終われる為、対象達を支配していた。 例えば、そう。 【高慢】スペルディアが殺し尽くした貴族の邸宅で開かれたパーティーは、裏向きには麻薬の売買を扱うものとして行われていたものである。 そして、この夜――グラバラスで行われている殺戮。 【憂鬱】や【高慢】が出現した貴族の邸宅とは"全く関係の無い"所で行われている粛清も、全て『征服魔女』が手掛けていた。 「……あぁ、そうだね。今日という日は、きっとグラバラスには悲劇的な一日として認識されるんだろうね。歴代……最もグラバラスが窮地に陥った日としてさ」 実際には、完全な内部粛清。だが、耳から伝わる声の主は、それを全てソラ達が織り成した事として擦り付けようとしている。 それに伴うは、国の清浄化。濁による利益の独占。 王族制度と貴族制度の廃止に繋がる、民衆への力の再分配。 声の主は、臓腑を抜き取るような声音を『征服魔女』の耳元で響かせる。 「今後、この国で聡明な指導者ばかりが生まれるとも限らん」 「……」 「力を使役する事に酔い……分不相応なものを求め続けた時、国は必ず破綻する。その時は、この国を滅ぼすのが他国ではなく、この国の民衆でなければならない」 「……そう、さね」
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