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「雄一、帰るの?」
不意に飛び込んできた声に私の身体が強張る。
---声の主は木崎さんだ。
「ああ、今日はちょっと用があって……」
答えながらゆーちゃんの視線が私の方に向けられる。
「あ、さっちゃんとか……」
ずっとゆーちゃんの隣に居たのに全く私の存在なんて気づいていなかった様子で驚く木崎さん。
「ああ、ちょっと勉強を見る約束してたんだ、な?」
本当は勉強なんて単なる口実。
毎日一生懸命、勉強しているゆーちゃんを遊びには誘い辛いけど、勉強なら---って。
「うん」
後ろめたさから声が小さくなり、それと反比例するようにゆーちゃんの手を握る手に力がこもる。
彼女には私の考えがすべて見透かされているような気がして、変に緊張してしまう。
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