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――…
―…
それから時間が経つのが異常に早くて……
気づくとゆーちゃんは学校を卒業し、向こうに行く日になっていた。
朝、布団で目が覚めた瞬間に気持ちが落ちてゆき、目が覚めてしまった事を、朝になってしまった事を真剣に恨んでしまった。
できるなら、ずっと布団の中に居たいって思ってしまったけど、ちゃんと見送るってゆーちゃんと約束していたのだ。
だから私は今こうして駅のホームのベンチにゆーちゃんと並んで座っている。
「そろそろ時間だな」
珍しく二人の間に続いていた沈黙を破ったのはゆーちゃんだった。
「うん……」
ゆーちゃんが立ち上がったのを合図に私もゆっくりと立ち上がる。
ゆーちゃんの隣は好き。でも今のゆーちゃんの隣に立つのは嫌。
これが最後じゃないのに常套句のようにお別れの言葉を口にしなければいけないのが嫌で嫌で仕方なかった。
でも時間は待ってはくれなくて、とうとうその瞬間が訪れてしまった。
「じゃあ幸江、元気で」
「……」
「すぐ会えるから」
「……」
「何か喋ってくれよ」
問いかけに一向に応えようとしない私にゆーちゃんが痺れを切らし掴みかかってきた。
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