29人が本棚に入れています
本棚に追加
「前田さん?」
少し離れたところから私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
勿論、「はい」なんて答えることができない私。
こんなところ誰にも見られたくないし、何より答えれる状態ではなかった。
「前田さん見なかった?」
「さっき給湯室の方に行ったような気がするけど……」
微かに聞こえる会話にビクリと身体を跳ねさせる。
本当にどこまでもタイミングが悪すぎるのだろう。
涙でぐちゃぐちゃな顔。
もう誤魔化しは利かないだろうと分かってはいるが、咄嗟に手の甲で涙を拭う。
.
最初のコメントを投稿しよう!