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「大丈夫?あんまり酷いようなら帰った方がいいよ」
心配そうな妙子さんの声が耳に届く。
でも私には妙子さんの声に答える余裕なんてなかった。
それよりも長谷部さんの事が気になって仕方なかった。
私の顔が見えないように庇ってくれているおかげで私と長谷部さんとの距離は皆無で……
初めて感じる長谷部さんの体温と仄かに香る匂い。
きっと私がゆーちゃん以外の男の人に免疫がないせいだ、と一生懸命自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせようとする。
でも治まることなく高鳴り続ける心音に私は動揺を隠しきれなかった。
急に泣き出した私を庇ってくれているだけなのに、私の背中に回された長谷部さんの手が妙に優しくて……
いつの間にか涙は止まり、私は長谷部さんの温もりに妙な安心感を抱いてしまっていた。
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