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「ねぇ、訊いた?長谷部さん、奥さんと寄りを戻すらしよ」
給湯室にトレイを戻していた私に妙子さんが鼻息荒く話しかけてきた。
「そうみたいですね」
「あれ?驚かないの?」
淡々と答える私に妙子さんはつまらなそうに訊き返してきた。
「驚きましたけど、でも良かったじゃないですか。娘さんも来年は小学生だし、やっぱりお父さんが居てくれた方がいいに決まってますよ」
自分で言ったくせに、ほんの少しだけ胸が痛んだ。
このことを知ったのは3週間前だった。
ちょうど、どう別れを告げればいいかと思っていた矢先のことで、私にとっては好都合なタイミングだったと……
―――だと、思うようにした。
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